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博物誌Vol.002 巻き貝 その成長の不思議

ホラガイは連続的に成長できるか | ホネガイは120°ピッチで成長する 証拠を殻に描き残す
ホネガイの棘の列は一列全部作り直す

ホラガイは連続的に成長できるか

建築物 屋久島の民宿にあったホラガイをスケッチしながら、オヤッと思った。
 貝の真上(かくちょう殻頂)の方向から見ると、貝殻の螺旋の進行角度240°毎に、らそう螺層の間を結ぶ同じ波形をしたひだ襞状の部分が繰り替えされている(図1. 法螺貝、左上の平面図)。巻き貝の螺旋の中心から外側への進行は、貝の成長を意味しているのだから、この襞は貝の成長の何かの段階の痕跡を残しているものでなければならない。一体この正確な角度240°は何だろう。本にも図鑑にも、この方向から見た図や写真は載っていない。
先ず最初は、ホラガイは連続的に休み無く、殻を作り続けているのだと仮定してみる。
 図の、今出来たばかりのホラガイの口(かくこう殻口)は、螺旋の延長として、引き続き左斜め下の方向に移動を続けなければならない。その新しく作る部分は、更に太くなる螺旋面に沿うことになる。口の周囲を形作っている唇(右のがいしん外唇と、左のないしん内唇およびしじょうへき歯状襞)は大きく反り出しているから、進行方向の面には塗り重ね、その反対面は溶かすことを連続的に続けて行くことになる。
 この時、図の殻口の左側から縦に長く続く襞(じゅうちょうみゃく縦脹脈)の下半分(螺層間のほうごう縫合線から下)は、殻口の移動の下になって消えてしまう。消されずに残った縦脹脈の上半分が、平面図に見えた240°毎の区切りになる。この縦脹脈の形は、「フジツガイ科」に属する巻き貝に共通する特徴である。水管回りも同様に絶えず向きを作り直す。これで最初の疑問については、一応の説明がついた。


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 私は貝のコレクターではないが、そのあまりの見事さにホネガイの殻を1つ買った(図3.)。鹿児島か高知だったか忘れた。
 友人の永田君も、少し小さいホネガイを2つ持っていた(図4.)勿論、この3つのホネガイは別の個体ではあるが、比較をすれば、成長の仕組みをある程度まで想像することが出来るだろう。
図のホネガイが次の120°を進もうとしたとき、縦張肋から反り上がって生えている大小の棘の約4本は、一旦溶かして作り直さなければならない。しかし、邪魔なのはそれだけではない。


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 移動しようとする螺口がぶつかる棘の列は、今ある三つの列の中で最初に作られたものだから、螺層に取り付いているレベルが一番高い。棘の上から四本は取り除かなければならない。更に、以前に作った棘の列は、太さも、長さも、棘の間隔も小さく、次ぎに作ろうとしている棘の列は今までのどれよりも大きいものである。もう一つの問題もある。殻口が移動する場合、それから発する水管溝も同じ面に移らなければならない。棘は長刺・短刺があり(図3. の右下。更に細く短い棘列が加わる場合がある)、新しく作られる棘列の長刺・短刺は、共に水管溝の右側から生えなければならない。水管嘴も伸ばす。
 これらの理由から、ホネガイが120°成長するとき、螺口の移動と同時に、棘の一列は上から下まで全部作り直さねばならない。考えても大変な仕事である。
 たまたまあった三つのホネガイを比較してみると、体の小さいものは棘の列の本数も少なく、大きいほど本数、太さ、間隔共に大きくなっている。
 真上から見ると(図3. 右下、螺層平面図)、成長につれて螺層が僅かに左に捻れてゆく。正3角形に新しく加わる1辺の長さが、常に少しずつ長く成長することを考えると、この捻れは理解できる。
随分ややこしく長々しい説明をしたが、ホネガイの成長の「幾何学」は分かった。「カタツムリ」で見慣れていることだが、巻き貝には2つの目がある。レンズも網膜もあるそうだ。2つの目があれば脳もあるはずだ。この複雑な設計図はどんなふうに描かれているのだろうか。生きているホネガイの生活はまだ何も見えていない。


「時が刻むかたち - 樹木から集落まで 百の知恵双書」:奥村昭雄(著)より抜粋
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