イントロ - 木曽の山から |
 |
|
|

夏の日差しはチリチリと肌を刺す。
木曽の人は26℃を越えると、必ず挨拶代わりに「今日は暑いね」という。
ちょっと木陰にはいると汗は引いてしまう。
「これは暑いとはいわない。気持ちがよいというんだ」と私は内心思うが、口では「ああ、暑いね」と合わせる。
大粒の夕立がバタバタという音ではじまる。その後には、爽やかな夕方が来る。
木曽の夏は短い。 |
 |
 |
 |
 |
お盆が終わると、「今日から秋だ!」と感じる空気の日が来る。
朝夕は肌寒く、掛けぶとんをもう一枚出してくる。
秋草が花を急ぎ、天の川がくっきりと見えてくる。
山の動物も冬支度だ。
明日収穫しようという畑がよくやられる。
彼らは一番美味しい実りを知っている。
「いい季節だ」、だが秋はかけ足で過ぎる。 |
家具作りで冬の外仕事はつらい。
今はフォークリフトがあるから材木の力仕事はなくなった。
しかし、風があると寒さで思考能力がなくなってしまう。
暖かい部屋に戻ると、血管の中を血が動き出したのがわかる。
音のない夜、藤の実がはじけ飛ぶ乾いた音におどろかされる。
朝焼けに染まる御嶽山は神々しい。 |
 |
 |
 |
 |
春は4月の終わり頃からはじまる。
唐松の芽吹き、川柳の黄色、景色全体が霞のようににじんでいる。
花は一斉に咲く。
5月からは山菜の季節。入梅前に丸太の製材を終えていなければならない。
暖かくなると虫が動き出すからだ。 |
これは木曽にだけある特別な自然ではない。
形こそ違え、日本の何処にでもある。
都会で暮らしていると、こんな自然の刺激を永いあいだ忘れてしまっていた。
自然の変化は、私も「生きもの」のひとつなんだということを思い出させてくれる。 |